よろず富川呉服店: 昭和30年代 ノスタルジー小説 女性の生き方
たとえフィクションであれ、人はストーリーに、その登場人物に感情移入し、様々な感情を追体験する。それが小説の醍醐味である。
Kindle出版を始め、いつかは創作にもチャレンジしてみたいと思いつつ、経験を元にした私小説的なものを書きかけてはいるが、日の目を見るかは不明だ。
さて、そんな中、Xでの交流を通じ諸先輩作家さんの作品を読むようになり、今回この「よろず富川呉服店」を読んだ。
(作者は、noteでも沢山の短編を投稿しておられる、まゆ川さん)
以前の仕事柄、北海道はあちこちに行ったものの、本作の舞台となった炭鉱町、三笠へは実際に行ったことはない。
しかし、この物語を読んでいると、まるで自分もかつてその場に暮らしたことがある様な気分になる。
冒頭の電車のシーンはなにかの映画やアニメを連想させる様で、情景がすぐにイメージ出来てあっという間に物語の世界へと誘ってくれる。
詳しく書くとこれから読む方の楽しみがなくなってしまうので避けるが、登場人物それぞれ個性的で、いいキャラが揃っている。
そして、フィクションとはいえ良い感じでツボを押さえた出来事の数々。
ラストシーンを電車で読んだことを後悔するほど、胸が熱くなるストーリー。
著者は、果たして登場人物の誰なんだろう?もしや主人公福子の娘さん?という謎も読む楽しみのひとつである。
この物語は著者が愛する、かの地に暮らした人々への憧憬をこめた、そして女性の生き様を描いた、人間そのものへの讃歌である。
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